2005年02月20日

かわいく、品よく、さっそうと。

翼のある言葉 紀田 順一郎



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 名言集の類を、わたしは買うことはないのだが、紀田順一郎さんという人の『翼のある言葉』という本には、思わず手が出たのだった。題名に目がとまり、本屋でぺらぺらとめくるうちに、心が震えてきたのだ。
 この本の題名は、ドイツ語の"Geflugeltes Wort(翼をそなえた言葉)"からとっているのだそうで、意味は「時と場所を越えて胸に飛び込んでくる言葉」のことだと、カバーの裏に書いてあった。
 また、"自ら落ち込んだ時、挫折した時に、励みとし、心の支えとした選りすぐりの言葉を集めた"とある。
 わたしにとっても、そういうものになるような言葉の、ぎっしりつまった本だ。わたしの、うれしかった出逢いの一つだ。

  ★

 心につらさを抱えて、ひとり壁によりかかって、この本を読んでいた、そんな時に、心を熱くしたのは、この言葉を紹介する頁だった。

気持ちが萎え、ときには涙することもあった。だが、涙を恥じることはない。この涙は、苦しむ勇気をもっていることの証だからだ。(V・E・フランクル『夜と霧』より)

 欲しいと願った"勇気"というものを、ではわたしは、既に、持っているのかな……。
 そう思ったら、それが希望の灯のように、心にともった。心にあるつらさが、無くなったわけではなく、涙を流す自分も、いなくなるわけではなかったが、それでも……。
 わたしは、うれしかったのだと思う。

  ★

 また別の頁。
 『モンテ・クリスト伯』や『三銃士』の作者、アレクサンドル・デュマの言葉には、なんだか、にこにことしてしまう。
 自分の息子の姿勢が悪いのを見て、意見したときの言葉。

「いいかい、姿勢というものを持っているのは人間だけなんだぜ。動物には形はあるが、姿勢はないんだ。ほんとうの人間なら、歩くときに、ひと足ごとに自分の足が、広大な宇宙の一部である地球という天体に触れていることを認識してるんだ。それにお前は、この地球の全表面が、お前とおれだけが名乗る権利をもっているアレクサンドル・デュマという名で鳴り響いていることを忘れてはならんのだ。さあ、今日からは、天文学的に歩いてくれよ」

 ああ、良いな。こういうことを言う男性が、わたしは好きだ。

  ★

 本を購入したのは、昨年の初春。わたしがつらさを抱えていたその頃に、一緒に花見をした人のことを、今、思い出している。なぜか、わたしの心に浮かぶのは、その人の泣いてる顔で……。

 その人の幻に、心のなかで語りかけている。

 (かわいく、品よく、さっそうと、歩いて行きたいな。

 そしてまた、あなたに会いたい。)

 もしも、この想いがその人に届いたとき……。うれしいと、思ってくれるだろうか。もし、そう思ってくれたら、しあわせだな。
 なんだか、そんなことを、今夜は思っている。
posted by bkntmrg at 21:44| Comment(0) | TrackBack(1) | わたしの本棚から | 更新情報をチェックする
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「翼のある言葉」
Excerpt:  「翼のある言葉」(紀田順一郎・新潮新書)を読みました。なお、この記事はbkntmrgさんのブログ銀河の揺籃・かわいく、品よく、さっそうと。にトラックバックしています。  この本はいわば名言集です。..
Weblog: 小さな星を辿って
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